ゴールディングの蝿の王の関連著作
ホッブズの「リヴァイアサン」
トーマス・ホッブズの「リヴァイアサン」(1651年)は、政治哲学の古典であり、「蝿の王」と共通するテーマを多く含んでいます。ホッブズの著作は、自然状態における人間の生活は「万人の万人に対する闘争」であり、そこでは生命は「孤独で、貧しく、汚く、残酷で、短い」ものであろうと論じています。ホッブズによれば、社会や政府の構造が存在しない場合、人間は自分の利己的な欲望と、絶えず死の恐怖に突き動かされるため、この自然状態の中で、道徳、正義、社会秩序といった概念は存在し得ません。
「蝿の王」も同様に、人間の性質の暗い側面を探求し、外部の社会構造が崩壊した際に何が起こるかを描写しています。文明社会から切り離された少年たちは、野蛮で暴力的な行動に陥り、秩序と理性の崩壊を示唆しています。豚の頭である「蠅の王」は、悪と人間の心の内側に存在する野蛮な本能を象徴しており、ホッブズの哲学と類似しています。
ルソーの「人間不平等起源論」
ジャン=ジャック・ルソーの「人間不平等起源論」(1754年)は、「蝿の王」に関連する、もう一つの影響力のある著作です。この著作でルソーは、人間は本来は善であり、社会によって堕落させられたと主張しています。彼は、文明、特に私有財産の概念が、競争、嫉妬、社会的不平等につながると主張しました。
「蝿の王」はルソーの考えを直接的に支持しているわけではありませんが、社会構造の欠如が人間の行動にどのように影響するかを探求するという点で、ルソーの著作と共鳴しています。少年たちは当初、ユートピア的な社会を築こうとしますが、すぐに権力、貪欲、暴力の犠牲になります。この過程は、ルソーが主張した社会が人間の道徳性を堕落させる可能性のある方法を反映しているとも解釈できます。
コンラッドの「闇の奥」
ジョゼフ・コンラッドの「闇の奥」(1899年)は、「蝿の王」といくつかのテーマ上の類似点を共有している、帝国主義と人間の精神の暗黒面を探求する小説です。コンラッドの小説は、ヨーロッパの植民地支配を描いた作品として、文明の装いの下にある野蛮さを露呈しています。主人公のチャールズ・マーロウのコンゴ川上流への旅は、人間の心の奥底への旅であり、そこで彼は人間の残虐行為と、抑圧されていない人間の欲望の暗黒面と対峙します。
同様に「蝿の王」も、隔離された島という状況設定において、人間の性質の潜在的な暗黒面を探求しています。少年たちは当初、文明人の規範と行動に従っていますが、徐々に野蛮さに屈し、暴力と儀式的な行動に耽るようになり、コンラッドの小説に描かれた暗黒面を反映しています。どちらの作品も、表面的な文明のベニヤの下に潜む、人間の野蛮さの可能性を示唆しています。