コンラッドの闇の奥の話法
語り手について
Marlowが物語の語り手であり、彼の視点から物語が進行します。Marlowは語り手であると同時に、物語内の登場人物でもあります。彼は自分の経験を他の登場人物に語り聞かせる形で物語が進行しますが、読者はMarlowの語りを通してのみ物語を体験します。
枠物語の構造
この作品は二重構造、すなわち枠物語の構造を取っています。テムズ川に停泊した船の上で、Marlowが他の船乗りたちに自身のコンゴ川遡上の経験を語るところから物語は始まります。Marlowの語りが内側の物語となり、テムズ川の船上での出来事は外側の物語として機能します。この二重構造によって、読者はMarlowの語る物語と、それを聞く他の船乗りたちの反応の両方を同時に体験することになります。
自由間接話法の多用
Marlowは自身の経験を語る際に、しばしば自由間接話法を用います。これは、地の文の中に登場人物の心情や思考を織り交ぜる技法です。これにより、読者はMarlowの視点を通して物語を体験するだけでなく、彼の内面世界にも深く入り込むことができます。
断片的な描写
Marlowの語りは時系列に沿って進むとは限りません。むしろ、彼の記憶や連想に基づいて、断片的に語られることが多いです。場所や時間も唐突に移り変わるため、読者は Marlowの意識の流れを追うようにして物語を理解していく必要があります。
象徴主義
Marlowの語りは、具体的な出来事の描写だけでなく、象徴的な意味合いを持つ表現やイメージで溢れています。闇、川、霧などのモチーフは、人間の心の奥底にあるもの、文明と野蛮、理性と狂気といったテーマを象徴しています。
沈黙と語られざるもの
Marlowは全てを語り尽くすわけではありません。特に、人間の心の闇や植民地主義の残虐性といった主題については、直接的な表現を避ける傾向があります。むしろ、沈黙や暗示的な表現を用いることで、読者に想像の余地を与えています。