コンラッドのロード・ジムの関連著作
ジョゼフ・コンラッドと植民地主義
ジョゼフ・コンラッドの小説『ロード・ジム』は、植民地主義のテーマを扱った重要な文学作品です。この小説の舞台は19世紀後半、ヨーロッパ列強が東南アジアに植民地支配を広げていた時代です。コンラッド自身も、ポーランド生まれでありながら、イギリス商船隊で船員として働き、東南アジアを訪れた経験を持っていました。
コンラッドは、『ロード・ジム』の中で、植民地主義がもたらす道徳的なジレンマを描いています。主人公のジムは、イギリスの商船の航海士でありながら、事故をきっかけに、東南アジアの島で、現地の人々から「トゥアン・ジム(ジム様)」と呼ばれる指導者的な立場になります。しかし、彼は、西洋文明の代表者としての責任と、現地の文化や伝統との間で葛藤し、苦悩することになります。
東洋主義と西洋のまなざし
『ロード・ジム』は、エドワード・サイードの「オリエンタリズム」の概念と関連づけて論じられることがあります。オリエンタリズムとは、西洋が東洋をステレオタイプ化し、劣ったものとして描く傾向を指します。
コンラッドは、西洋文明に批判的な視点を持ちながらも、完全にそこから自由になることはできませんでした。『ロード・ジム』では、東南アジアの風景や文化が、神秘的でエキゾチックなものとして描かれる一方で、現地の人々は、未開で野蛮な存在として描かれることもあります。
責任と贖罪のテーマ
『ロード・ジム』の重要なテーマの一つに、責任と贖罪があります。ジムは、物語の冒頭で、乗客を見捨てて船から逃げ出したという過去を持ちます。彼は、この罪の意識から逃れることができず、東南アジアの地で、新たな人生を築こうとします。
しかし、過去はジムを執拗に追いかけ、彼は再び、困難な選択を迫られることになります。ジムの物語は、人間が過去の過ちとどのように向き合い、贖罪を果たすべきかを問いかけるものです。