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コンラッドのロード・ジムから学ぶ時代性

コンラッドのロード・ジムから学ぶ時代性

ヨーロッパ中心主義と帝国主義

『ロード・ジム』は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのヨーロッパ中心主義と帝国主義が色濃く反映された作品です。主人公ジムは、勇敢で冒険心に溢れた若者として描かれていますが、同時に、植民地に対する偏見や優越感を持つ、当時のヨーロッパ人男性の典型的な一面も持ち合わせています。彼は、東洋を「謎めいた」「野蛮な」「未開の」場所とみなし、西洋文明の力でそれを「啓蒙する」という使命感に燃えています。

ジムが務める貿易会社も、帝国主義的な思惑を持って東洋に進出しており、現地の住民を搾取し、利益を追求しています。このような描写は、当時のヨーロッパ社会における帝国主義に対する批判的な視点を反映しているとも解釈できます。

男性性の規範と自己欺瞞

当時の社会においては、男性は勇敢で、責任感が強く、名誉を重んじることが求められていました。ジムもまた、このような男性性の規範に強く影響を受けています。彼は、パトナ号の事故から逃亡した自分の臆病な行為を許すことができず、名誉回復のために絶えず苦悩します。

しかし、ジムの行動は、必ずしも彼の理想とする男性像と一致しているわけではありません。彼は、自己正当化や自己欺瞞を繰り返し、現実から目を背けようとします。このことから、当時の男性性の規範が、いかに息苦しく、矛盾に満ちたものであったかを浮き彫りにしています。

異文化理解とコミュニケーションの困難さ

『ロード・ジム』は、異なる文化を持つ人間同士の理解とコミュニケーションの難しさをテーマとしています。ジムは、パトラサンという異文化の世界に身を置きながらも、なかなか現地の人々の文化や価値観を理解することができません。彼は、自分の価値観を押し付けようとしたり、誤解に基づいて行動してしまったりします。

作中では、言葉の壁だけでなく、文化的な背景や価値観の違いが、コミュニケーションを阻害する様子が描かれています。これは、当時の植民地支配における支配者と被支配者の関係、そして異文化理解の難しさを象徴していると言えるでしょう。

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