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コンラッドのノストロモから学ぶ時代性

コンラッドのノストロモから学ぶ時代性

ノストロモ号—時代の縮図

ジョセフ・コンラッドの『ノストロモ』は、単なる海洋冒険物語を超越した、人間の欲望、搾取、そして社会構造の暗部を鋭くえぐる作品です。物語の舞台となる老朽船ノストロモ号は、まさに20世紀初頭の帝国主義時代の縮図として描かれています。

植民地主義と搾取の象徴

ノストロモ号は、南米の架空の国コスタグァーナから銀を運ぶ貨物船です。この設定自体が、当時のヨーロッパ列強による植民地支配と資源搾取を象徴しています。船長やヨーロッパ人の乗組員は特権階級にあたり、現地の労働者は低賃金で過酷な労働に従事させられています。彼らの間には明確な境界線が存在し、不平等と搾取が日常化しています。

資本主義の論理と人間の異化

ノストロモ号を所有する鉱山会社は、利益を追求するために、労働者や船の安全を軽視しています。これは、当時の資本主義社会における人間の異化を反映しています。労働者は、資本家の利益のために機械の一部として扱われ、人間としての尊厳や自由を奪われています。

多様な登場人物と社会の縮図

ノストロモ号には、様々な国籍、階級、思想を持った人物が登場します。船長マクホィアの揺るぎない責任感、理想主義者のデックの苦悩、革命家ノストロモの裏切りなど、彼らの行動や葛藤を通して、当時の社会における複雑な人間模様が浮かび上がります。

人間の心の闇と権力の腐敗

コンラッドは、ノストロモ号という閉鎖空間の中で、人間の心の闇と権力の腐敗を容赦なく描き出しています。銀鉱の発見によって、登場人物たちは欲望、猜疑心、暴力といった負の感情に支配されていきます。これは、当時の社会における道徳の退廃や人間のエゴイズムへの警鐘ともいえます。

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