ゲーテのファウストに影響を与えた本
ヨブ記
ヨブ記は、旧約聖書に収められた書物の一つで、人間の苦しみと神の正義、そして信仰の本質について問いかける、深遠な哲学的・宗教的テーマを扱っています。 神に忠実な人物ヨブが、サタンの試練によって財産、家族、健康をすべて失いながらも、なおも神への信仰を貫き通す姿が描かれています。
ゲーテの『ファウスト』は、人間の欲望と知識への飽くなき探求、そして救済の可能性といった普遍的なテーマを扱っており、ヨブ記との共通点が多く見られます。特に、ファウストとメフィストフェレスの関係は、ヨブとサタンの関係を彷彿とさせます。
ヨブ記におけるサタンは、神に挑み、ヨブの信仰を試す存在として描かれています。同様に、『ファウスト』のメフィストフェレスも、ファウストに挑戦を仕掛け、彼の魂を賭けた契約へと導きます。 メフィストフェレスは、常にファウストの限界を試そうとしますが、ファウストは絶望に屈することなく、知識と経験を求め続けます。
また、ヨブ記と『ファウスト』の双方に見られる重要なテーマとして、「苦しみを通しての成長」が挙げられます。ヨブは、苦難を経験することで、神の全能性と人間の有限性、そして真の信仰の在り方を理解していきます。 一方、ファウストもまた、様々な経験を通して自己の限界と可能性を見つめ直し、人間存在の奥深さを探求していきます。
このように、ヨブ記は『ファウスト』の主要なテーマや登場人物、そして物語全体の構成に大きな影響を与えたと考えられます。ゲーテ自身も、ヨブ記を深く研究しており、その影響は『ファウスト』だけでなく、彼の他の作品にも見出すことができます。