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ケルゼンの自然法論と法実証主義の光と影

## ケルゼンの自然法論と法実証主義の光と影

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自然法の批判と法実証主義的立場

ケルゼンは、伝統的な自然法論を批判し、法実証主義の立場を強く主張しました。彼は、自然法論が「法」と「道徳」を混同していると批判しました。自然法論者は、道徳的に正しい法のみを真の法と見なしますが、ケルゼンは、法の妥当性はその内容ではなく、それが所定の手続きに従って制定されたかどうかにかかわりなく存在すると主張しました。

彼の法実証主義は、「純粋法学」と呼ばれ、法以外の要素、例えば政治、道徳、社会学などを排除し、法を規範の体系として捉えようとするものでした。ケルゼンは、この純粋法学によって、法を客観的に認識し、法学を真の科学にすることができると考えました。

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規範段階説と基本規範

ケルゼンは、法体系をピラミッド型の階層構造として捉え、上位の規範が下位の規範の妥当性の根拠を与えるという「規範段階説」を唱えました。そして、このピラミッドの頂点に位置するのが「基本規範」です。基本規範は、それ自体はいかなる上位規範からも妥当性を導き出すことができず、我々が法体系全体を前提とすることによってのみ認識されます。

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実定法秩序への批判と抵抗権の問題

ケルゼンの法実証主義は、ナチス政権下における法の妥当性をめぐる問題に直面しました。ナチス政権によって制定された法律も、形式的には所定の手続きに従っており、ケルゼンの理論に則れば「法」として有効となります。しかし、ケルゼン自身もナチス政権の法律を「不法」と見なし、批判しました。

これは、法の内容を完全に度外視したケルゼンの法実証主義の限界を示していると言えるかもしれません。また、彼の理論では、不正義な法律に対しても抵抗する根拠を与えることが難しいという問題も指摘されています。

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現代におけるケルゼン理論

ケルゼンの理論は、現代においても法哲学の重要な理論の一つとして位置づけられています。彼の法実証主義は、法の客観性と自律性を強調し、法学を他の社会科学から独立させようとする試みとして高く評価されています。一方で、その形式主義的な性格や、現実の法体系における複雑さを十分に捉えきれていないという批判もあります。

特に、現代社会においては、法と道徳、政治、経済などが複雑に絡み合っており、ケルゼンが目指したような「純粋な法学」を構築することが困難であるとの指摘もあります。

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