## ケインズの雇用・利子・貨幣の一般理論の発想
ケインズ以前の古典派経済学の枠組み
ケインズ以前の経済学、特に「古典派経済学」と呼ばれる学派は、市場メカニズムの自己調整機能を重視していました。需要と供給は価格メカニズムを通じて常に一致し、完全雇用が実現されると考えられていました。
### 1930年代の世界恐慌とケインズの疑問
しかし、1929年に始まった世界恐慌は、古典派経済学の前提を揺るがすものでした。世界的に失業者が溢れ、需要は低迷し、市場メカニズムは有効に機能していないように見えました。ケインズはこの状況を目の当たりにし、古典派経済学の枠組みでは説明できない現実を前に、新たな経済理論の構築を迫られました。
### 有効需要の原理と乗数効果
ケインズは、雇用量を決定するのは、生産要素に対する需要ではなく、「財・サービスに対する総需要」、すなわち有効需要であると考えました。有効需要が増加すると、企業は生産を増やし、雇用を増やすことになります。 さらに、ケインズは、有効需要の増加が、その増加分以上に国民所得を押し上げる「乗数効果」の概念を提示しました。
### 流動性選好説と利子率の決定
ケインズは、人々が資産を保有する際に、流動性の高い貨幣を保有したいという欲求（流動性選好）を持つことを指摘しました。そして、この流動性選好の強さが利子率を決定すると主張しました。人々が貨幣を保有したいと考えるほど、利子率は上昇し、逆に貨幣を保有したくないと考えるほど、利子率は低下するというメカニズムです。
### 政府の役割と財政政策の必要性
ケインズは、市場メカニズムは必ずしも自動的に完全雇用をもたらすとは限らないと考えたため、政府が積極的に経済に介入する必要性を唱えました。具体的には、政府支出を通じて有効需要を創出し、雇用を増加させる「財政政策」の有効性を主張しました。
これらのケインズの考えは、「ケインズ革命」とも呼ばれ、その後の経済学に大きな影響を与えました。