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ケインズの雇用・利子・貨幣の一般理論の思索

## ケインズの雇用・利子・貨幣の一般理論の思索

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古典派経済学への批判

ケインズは、自著『雇用・利子・貨幣の一般理論』の中で、当時の主流派経済学であった古典派経済学の体系に挑戦しました。古典派経済学は、「供給はそれ自身の需要を生み出す」というセイの法則を前提とし、市場メカニズムが常に完全雇用をもたらすと考えていました。しかし、1930年代の世界恐慌は、この古典派経済学の楽観的な見通しを根底から覆すものでした。ケインズは、現実経済においては、需要不足によって失業が長期化する可能性を指摘し、政府による積極的な介入の必要性を主張しました。

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有効需要の原理

ケインズは、古典派経済学とは異なり、需要側、特に「有効需要」が経済活動を決定づけるという考え方を提示しました。有効需要とは、財・サービスに対する総需要であり、消費需要と投資需要から構成されます。ケインズは、人々の将来に対する不安や不確実性によって、投資需要が大きく変動することを指摘しました。

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乗数効果

ケインズは、投資の増加が国民所得をそれ以上に増大させる「乗数効果」の概念を提唱しました。これは、投資の増加によって雇用が生まれ、その雇用が新たな消費を生み出すという循環が働くためです。乗数効果は、政府支出の増加にも同様に作用し、有効需要の拡大を通じて経済を活性化させることができるとされました。

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流動性選好説

ケインズは、貨幣に対する人々の需要を「流動性選好」という概念で説明しました。人々は、取引動機、予備的動機、投機的動機という3つの動機に基づいて貨幣を保有しようとします。特に、将来の金利変動に対する予測に基づいて貨幣を保有する投機的動機は、利子率と貨幣需要の関係を規定する上で重要な役割を果たします。

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金融政策と財政政策

ケインズは、有効需要の不足によって失業が発生する場合には、政府が金融政策と財政政策を通じて積極的に介入すべきだと主張しました。金融政策としては、中央銀行が利子率を引き下げることで投資を促進する方法を提示しました。また、財政政策としては、政府支出の拡大や減税によって有効需要を直接的に増やす方法を提唱しました。

ケインズの『一般理論』は、発表当時から大きな議論を巻き起こし、その後の経済学、そして経済政策に多大な影響を与えました。特に、世界恐慌後の資本主義経済における政府の役割を大きく変え、現代の経済政策の基礎を築いたと言えるでしょう。

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