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グロチウスの自由海論を読む前に

グロチウスの自由海論を読む前に

背景知識の習得

 グロチウスの『自由海論』は、17世紀初頭の国際情勢と密接に関係しています。当時のヨーロッパは、大航海時代を経て、世界各地への進出を活発化させていました。ポルトガルやスペインは、新航路の発見を契機に、広大な植民地帝国を築き上げ、莫大な富と権力を獲得しました。一方、後発のオランダやイギリスは、既存の勢力図に挑戦し、新たな交易ルートや植民地獲得を目指していました。このような状況下で、海洋の利用や支配をめぐる国家間の競争は激化し、国際法の整備が喫緊の課題となっていました。

 『自由海論』は、こうした時代背景を踏まえ、海洋の法的性格、航海の自由、海洋資源の利用など、当時の国際社会が直面する重要な問題を論じた画期的な著作です。そのため、『自由海論』を深く理解するためには、16世紀から17世紀にかけてのヨーロッパ史、特に大航海時代や国際関係史に関する基礎知識を持つことが不可欠です。

当時の国際法の理解

 グロチウス以前の国際法は、ローマ法や自然法などを基礎としつつも、体系的な整備が進んでおらず、国家間の慣習や条約に大きく依存していました。特に、海洋に関する法は未発達であり、航海の自由や領海の範囲など、基本的な問題についても明確なルールが確立していませんでした。

 グロチウスは、『自由海論』の中で、海洋は人類共通の財産であり、全ての国家が原則として自由に航行・漁業・通商を行う権利を持つと主張しました。これは、当時の国際法の常識を覆す革新的な主張であり、後の国際海洋法の形成に多大な影響を与えました。当時の国際法の状況や問題点を押さえながら、『自由海論』を読むことで、グロチウスの主張の画期性や歴史的意義をより深く理解することができます。

自然法思想の理解

 グロチウスは、『自由海論』において、自然法の概念を重要な根拠として用いています。自然法とは、人間の理性や本性に由来する普遍的な法であり、特定の国家や時代の法秩序を超越した上位の法と考えられていました。グロチウスは、海洋の自由は、自然法によって保障された人類共通の権利であると主張し、ポルトガルやスペインによる海洋の独占を批判しました。

 グロチウスの自然法思想は、古代ギリシャ・ローマの思想や、中世スコラ哲学の影響を受けつつも、独自の解釈を加えたものでした。彼の自然法思想は、『自由海論』だけでなく、主著である『戦争と平和の法』にも通底する重要な概念です。当時の自然法思想とその歴史的背景を理解することは、『自由海論』におけるグロチウスの論理展開を理解する上で欠かせません。

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