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グロチウスの自由海論を読む

## グロチウスの自由海論を読む

海洋の法典化へ向けた第一歩

17世紀初頭、国際社会は未曾有の変革期を迎えていました。大航海時代を経て、ヨーロッパ諸国はこぞって海外進出を加速させ、交易や植民地支配を通じて富と権力を蓄積していました。しかし、新たな航路や領土の発見は、同時に国家間の摩擦や紛争の火種ともなりました。とりわけ、広大な海洋における自由と権利をめぐる対立は深刻化し、国際法の整備が喫緊の課題となっていました。

「閉鎖された海」への挑戦

当時、ポルトガルやスペインといった海洋進出の先駆者たちは、自らが発見した航路や海域を独占的に支配しようと試みていました。いわゆる「閉鎖された海」という概念に基づき、他国の船舶の航行や通商を厳しく制限し、莫大な利益を独占しようとしたのです。こうした動きに対し、新興の海洋国家であるオランダは強く反発しました。自由な交易を通じて国力を増強しようとするオランダにとって、海洋の自由は死活問題だったからです。

グロチウスと「自由海論」

こうした時代背景の中、1609年に出版されたのが、オランダの法学者グロチウスの著した「自由海論」でした。当時弱冠26歳の若き俊才であったグロチウスは、本書において海洋の自由という概念を体系的に論じ、ポルトガルによる海洋支配の正当性を鋭く批判しました。

自然法に基づく海洋の自由

グロチウスは、古代ローマ法の概念を援用しながら、海洋は人類共通の財産であり、いかなる国家もそれを独占的に支配することはできないと主張しました。彼によれば、神が創造した自然法は、すべての国家に航海の自由と通商の自由を保障しており、ポルトガルが主張するような海洋の領有権は認められないものでした。

国際法の発展への貢献

「自由海論」は、出版当時こそ大きな反響を呼ぶことはありませんでしたが、17世紀後半以降、徐々に国際社会に影響を与えるようになりました。海洋の自由を訴えるグロチウスの主張は、その後の国際法の発展に多大な貢献を果たし、現代の海洋法の基礎となる重要な概念を提示したものとして評価されています。

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