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グロチウスの自由海論の普遍性

## グロチウスの自由海論の普遍性

普遍性の根拠

 グロチウスの『自由海論』(Mare Liberum, 1609年) は、ポルトガルによる東洋貿易の独占に対する反論として、海洋の自由という概念を国際法の原則として主張した書です。彼の主張は、以下の点にその普遍性の根拠を求めることができます。

* **自然法に基づく論理**: グロチウスは、海洋はすべての人間にとって共通の財産であり、いかなる国家もそれを独占することはできないという考えを、自然法の概念を用いて展開しました。自然法とは、人間の理性によって認識できる、普遍的かつ不変の法であり、特定の時代や場所に限定されません。グロチウスは、海洋の自由は、人間の自然な権利であり、いかなる国家もそれを侵害することは正当化されないという論理を展開しました。

* **ローマ法の援用**: グロチウスは、彼の主張を補強するために、ローマ法における公有財産の概念を援用しました。ローマ法では、海洋は、大気や流水と同様に、万民に共通の財産(res communes omnium) とみなされていました。グロチウスは、このローマ法の伝統を継承し、海洋の自由は、歴史的に認められてきた原則であることを強調しました。

* **国際社会への影響**: 『自由海論』は、17世紀初頭の国際社会に大きな影響を与え、海洋の自由という概念が広く受け入れられるようになりました。これは、当時のヨーロッパ諸国が、海外進出や貿易活動の拡大を図っていたという時代背景も影響しています。グロチウスの主張は、新興の海洋国家にとって有利に働き、国際法の形成に大きな影響を与えました。

普遍性の限界

 しかし、グロチウスの『自由海論』は、当時のヨーロッパ中心的な世界観を反映しており、現代の視点からは、その普遍性に限界があることも指摘されています。

* **植民地主義の正当化**: グロチウスは、海洋の自由を主張する一方で、ヨーロッパ諸国による植民地支配や奴隷貿易を容認していました。これは、彼の主張が、当時のヨーロッパ諸国の利益を正当化するために利用された側面があることを示しています。

* **海洋環境問題**: グロチウスの時代には、現代のような地球環境問題の深刻な認識はありませんでした。そのため、彼の主張は、海洋資源の乱獲や海洋汚染といった問題に対する考慮が欠けており、現代における持続可能な海洋利用の観点からは、その限界が指摘されています。

* **発展途上国の立場**: グロチウスの『自由海論』は、主にヨーロッパ諸国の視点から書かれており、当時の国際社会において周縁に位置づけられていたアジアやアフリカなどの国々の立場は考慮されていません。現代の国際法においては、発展途上国の海洋における権利や利益についても、十分に配慮する必要性が認識されています。

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