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グロチウスの自由海論の対極

グロチウスの自由海論の対極

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ジョン・セルデンの「閉鎖海論」、そして国家主権の主張

 1609年に刊行されたグロチウスの『自由海論』は、海洋をすべてに開かれた場と定義し、特定の国家による支配を否定しました。これは、当時隆盛を極めていたポルトガルやスペインによる植民地支配、そしてそれに伴う海洋の独占に対する反論として提示されました。しかし、グロチウスの主張は、国際社会に新たな波紋を広げることとなります。多くの国家が海洋の自由という概念に魅力を感じ、新たな可能性を探る一方で、海の支配権を主張し、自国の利益を追求しようとする動きも生まれました。

 その象徴的な存在が、イギリスの法学者ジョン・セルデンが1635年に発表した『閉鎖海論』です。セルデンは、歴史的根拠や法解釈に基づき、特定の海域は国家の主権下に置くことができると主張しました。彼は、ローマ帝国が地中海を支配していた事例を引き合いに出し、領海権の概念を国際法に導入しようと試みました。セルデンの主張は、イギリスが海洋進出を本格化させていく中で、自国の行動を正当化する理論的支柱となりました。

 セルデンの『閉鎖海論』は、『自由海論』に対する直接的な反論として執筆されたものではありませんでした。しかし、国家が海洋に対してどれだけの権利を主張できるのかという根本的な問いを投げかけ、その後の国際社会における海洋秩序をめぐる議論に大きな影響を与えました。グロチウスの提唱した「海の自由」という理念と、セルデンが主張した「国家主権に基づく海洋の支配」という対立軸は、その後も国際社会を二分する大きなテーマとして、現代に至るまで様々な議論を巻き起こすこととなります。

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