グロチウスの自由海論のテクスト
第一章 序論
本書のテーマは、海洋が航海と通商のためにすべての国民に開かれているか、あるいはポルトガル王によって主張されているように、いかなる国民も排除されることなくポルトガル王だけに属しているかという問題を取り扱うことである。この問題を論じる前に、自然法および諸国民の法によって何が許されているかについて、いくつかの一般的な事柄を述べておくことが適切である。
第二章 自然によって万人に共通のものは占有によって私有となる
まず第一に、自然はそれ自体ではいかなる物も私有財産としては確立しない。あらゆるものは共通であり、最初の占有者が自分のものにすることができる。しかし、いったん私有財産となると、自然はその所有者にある種の権利を与える。例えば、所有物を保持する権利、所有物を利用する権利、所有物を処分する権利などである。
第三章 海の性質は領有を許さない
第二に、海は占有によって私有財産となることができない。なぜなら、海は本質的に広大であり、境界線を引くことができないからである。海は絶えず動いており、特定の場所にとどまることができない。また、海はすべての国に共通しており、特定の国に属しているわけではない。
第四章 ポルトガル王による航海の独占権の主張は不当である
ポルトガル王は、インド洋の航海と通商を独占する権利を主張している。しかし、この主張には根拠がない。ポルトガル王は、インド洋を発見したという理由で、この海域に対する権利を主張している。しかし、発見は所有権を生み出すものではない。また、ポルトガル王は、教皇勅書によってインド洋の支配権を与えられたと主張している。しかし、教皇は世俗的な事柄に干渉する権限を持っていない。
第五章 結論
結論として、海洋は航海と通商のためにすべての国民に開かれている。ポルトガル王は、インド洋の航海と通商を独占する権利を持たない。