グロチウスの自由海論に影響を与えた本
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スペイン人の王国の法と神法、自然法におけるインディアス問題についての第二論考 – 略称「インディアス論」
1604年にオランダの法学者グロチウスが著した「自由海論」は、近代国際法の出発点として高く評価されています。この書の中でグロチウスは、海洋は万人に共通のものと主張し、ポルトガルの主張する「海の帝国」を批判しました。
グロチウスに大きな影響を与えた書物として、スペインの神学者フランシスコ・デ・ビトリアの「インディアス論」(正式名称は「スペイン人の王国の法と神法、自然法におけるインディアス問題についての第二論考」)が挙げられます。
ビトリアは、16世紀前半にスペインによるアメリカ大陸征服が盛んに行われる中、その法的・道徳的正当性を問う議論の先駆者となりました。彼は、アリストテレスやトマス・アクィナスの思想を基盤としながらも、当時のスペインの植民地支配を批判的に考察しました。
「インディアス論」の中でビトリアは、先住民にも自然法に基づく権利があると主張し、スペインによる一方的な征服や支配を否定しました。彼は、たとえ異教徒であっても、先住民は所有権や自衛権などの自然権を有しており、正当な理由なくその権利を侵害することは許されないと説きました。
ビトリアはまた、戦争は正義の戦争でなければならないと主張しました。彼は、先住民に対する布教活動は正当な戦争理由にはならず、先住民がスペイン人の布教活動を拒否したとしても、武力によってそれを強制することは許されないと論じました。
「インディアス論」は、グロチウスの「自由海論」に大きな影響を与えました。グロチウスは、ビトリアの自然法思想を海洋に適用することで、特定の国による海洋の独占を否定し、万人に開かれた「自由海」の概念を提唱しました。
グロチウスは、ビトリアと同様に、自然法は万人に共通のものであり、国家間の関係にも適用されると考えました。彼は、海洋はすべての人々に開かれた共通の財産であり、どの国もそれを独占することはできないと主張しました。
ビトリアの「インディアス論」は、グロチウスの「自由海論」だけでなく、後の国際法の発展にも大きな影響を与えた重要な著作と言えるでしょう。