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グロチウスの戦争と平和の法の構成

グロチウスの戦争と平和の法の構成

第一篇 戦争と平和の法の起源・根拠

第一篇では、戦争という行為が、自然法および万民法のいずれと適合しうるかという問題、すなわち戦争の法的根拠が主題となります。

第一篇は、さらに以下の3つの部に分かれています。

第一部 序論(1–5章)

まず、戦争の定義とその法的根拠についての先行研究、とりわけ戦争は自然法に反するというスコラ哲学の立場を批判的に検討します。
そして、戦争は自然法それ自体と必ずしも矛盾するものではなく、むしろ「所有権の侵害からの回復」という自然法上の権利と密接に関わっていることを論じます。

第二部 戦争は自然法に反しないこと(6–16章)

ここでは、戦争の法的根拠を自然法と万民法の両面から考察していきます。
自然法には、自己保存の欲求と並んで、所有権を含む自己の権利を擁護するという側面も認められることを主張します。
そして、戦争は、この自己の権利を擁護するという自然法上の権利を行使する手段になりえると論証します。

第三部 戦争の法的根拠としての万民法(17–25章)

ここでは、自然法に加えて、万民法もまた戦争の法的根拠となりうることを主張します。
万民法とは、神によって定められた自然法と区別される、人間の理性と歴史的経験に基づいて形成される法を指します。
グロチウスは、古代ギリシャ・ローマや中世ヨーロッパの歴史を紐解き、戦争に関するさまざまな慣習や条約が存在してきたことを示すことで、万民法が戦争を規制する法的秩序として機能してきたことを明らかにします。

第二篇 正当な戦争の原因(26–41章)

戦争が正当化されるためには、どのような条件が必要なのか。
第二篇では、正当な戦争(bellum iustum)の原因と、その判断基準について考察を進めます。

グロチウスは、戦争の正当性を判断する基準として、大きく分けて以下の3つのカテゴリーを提示します。

* **自己防衛と権利回復**: 他国からの侵略や権利侵害に対する自衛戦争や、奪われた権利を回復するための戦争は正当化されます。
* **損害賠償**: 他国から不当な損害を受けた場合、その賠償を求めるための戦争も正当化されます。
* **処罰**: 他国が重大な条約違反や国際法違反を犯した場合、その処罰を目的とする戦争も正当化されます。

これらの基準に基づいて、グロチウスは、自衛戦争、報復戦争、先制攻撃、内政干渉などをめぐる問題を具体的な事例を交えながら考察し、それぞれのケースにおける戦争の正当性について詳細な議論を展開していきます。

第三篇 戦争の遂行における法(1–25章)

正当な理由に基づいて開始された戦争であっても、その遂行はあらゆる手段を許容するわけではありません。
第三篇では、戦争遂行の際に遵守すべき法、すなわち戦時国際法について論じられます。

グロチウスは、戦争遂行における節度と proportionality (均衡)の重要性を強調し、無差別な殺戮や破壊行為を厳しく非難します。
その上で、戦闘員の資格、捕虜の扱い、中立国の権利と義務、休戦協定や講和条約の有効性など、具体的な問題について、歴史上の事例や慣行を参照しながら、詳細な法解釈を展開していきます。

**注記**

グロチウスの『戦争と平和の法』は、大きく三篇の構成から成り立ちますが、それぞれの篇はさらに複数の部に分かかれ、各部は詳細な章立てがなされています。
本回答では、大まかな構成の把握を目的として、篇と部の区別に留め、章立てに関する言及は省略しています。

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