## グラムシの獄中ノートの構成
ノートの体裁
アントニオ・グラムシは、1926年から1937年にかけてムッソリーニ政権によって投獄され、その間に30冊以上のノートを残しました。これらのノートは、一貫した構成や体系的な執筆計画に基づいて書かれたものではありません。ノートには、番号が振られているものの、時系列順に並んでおらず、内容も多岐にわたります。
内容の分類
グラムシのノートは、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類できます。
* **イタリア史に関する考察:** イタリア統一運動（リソルジメント）からファシズムの台頭に至るまでのイタリア近代史を、独自の視点から分析しています。特に、マキャベリやヘーゲルなどの思想家の影響を受けながら、イタリア社会における支配階級と民衆の関係、国家と市民社会の構造などを考察しています。
* **マルクス主義理論の発展:** 当時のソ連を中心とする共産主義運動の教条主義的なマルクス解釈を批判し、西欧社会の特殊性を考慮した新しいマルクス主義理論を構築しようと試みています。ヘゲモニー、知識人、有機的危機などの概念を用いながら、資本主義社会における支配の構造や革命の可能性について考察しています。
* **文学・文化論:** ダンテ、シェイクスピア、ピランデルロなどの文学作品から、当時の大衆文化やジャーナリズムに至るまで、幅広い文化現象を分析しています。文化を、単なる上部構造ではなく、政治や社会構造と密接に結びついた、重要な領域として捉えています。
ノートの解釈
グラムシのノートは、体系的な著作ではなく、断片的な考察やメモの集積であるため、その解釈には注意が必要です。彼の思想を理解するためには、断片的な記述を相互に関連付け、全体像を構築していく作業が求められます。