## グラムシの獄中ノートの世界
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獄中という特殊な状況
アントニオ・グラムシは、イタリアのマルクス主義思想家であり、政治家でした。彼は、ムッソリーニ率いるファシスト政権によって1926年に逮捕され、その後11年間を獄中で過ごしました。 「獄中ノート」は、この過酷な環境下で執筆された、30冊以上、合計4000ページを超える膨大な手書きのノート群です。
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検閲との闘い
グラムシは、獄中において厳しい検閲を受けていました。そのため、彼は当局の監視をくぐり抜けるために、比喩や暗示、婉曲表現などを駆使して自身の思想を表現せざるを得ませんでした。 例えば、マルクスの著作や「資本主義」といった直接的な表現は避け、「古典派経済学」や「産業社会」といった言葉に置き換えられました。
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多岐にわたるテーマ
「獄中ノート」は、哲学、歴史、文学、言語学、政治学など、多岐にわたるテーマを扱っています。 主要なテーマとしては、
* イタリアの歴史と文化の分析
* ヘゲモニーの概念
* 市民社会の役割
* 知性とイデオロギー
* 組織化された宗教としての党の役割
などが挙げられます。
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断片的で未完結な記述
「獄中ノート」は、体系的な著作ではなく、断片的で未完結な記述が多い点が特徴です。これは、獄中という特殊な状況下で執筆されたこと、検閲を意識せざるを得なかったこと、そしてグラムシ自身がノートを整理し、最終的な著作としてまとめることができなかったことに起因すると考えられています。
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後世への影響
「獄中ノート」は、グラムシの死後、1948年から1951年にかけて出版されました。 彼の思想は、20世紀後半のマルクス主義思想、特に西洋マルクス主義に多大な影響を与え、現在もなお、政治学、社会学、文化研究など、様々な分野で参照され続けています。