グッドマンの世界制作の方法と時間
グッドマンの世界制作の方法
ネルソン・グッドマンは、その著書『Ways of Worldmaking』(1978)の中で、世界は、絵画、音楽、文学などの象徴体系を用いて「作られる」と主張しました。彼によれば、世界は単一で客観的なものではなく、私たちが用いる象徴体系によって、それぞれ異なるバージョンが構築されるのです。
グッドマンは、世界制作の方法として、以下の5つの「構成活動」を挙げます。
* **記号化と表現:** 世界を認識し、記述するための記号システムを構築すること。言語、絵画、音楽などがその例です。
* **結合:** 複数の要素を組み合わせ、新しい関係性を生み出すこと。物語の構成、科学理論の構築などが該当します。
* **削除:** 特定の側面を無視したり、省略したりすること。地図の作成、歴史の記述などがその例です。
* **強調:** 特定の側面を際立たせ、重要性を増すこと。絵画における構図、音楽における強弱などが該当します。
* **補完:** 不完全な情報を補い、全体像を構築すること。考古学による過去の復元、天文学による宇宙の理解などがその例です。
グッドマンは、これらの構成活動は、客観的な基準に基づいて行われるのではなく、それぞれの文化やコミュニティにおける慣習や価値観に影響されると考えました。
時間の構成
グッドマンは、時間についても、世界制作の方法と同様に、象徴体系によって構成されると考えました。彼は、時間は単一で一方向に流れるものではなく、文化や文脈によって異なる方法で理解され、表現されると主張しました。
グッドマンは、時間の構成における重要な要素として、「時間の尺度」と「時間の構造」を挙げます。
* **時間の尺度:** 時間を測定するための単位やシステム。秒、分、時間といった単位や、カレンダーなどが該当します。
* **時間の構造:** 時間の順序、持続、同時性などを規定する枠組み。線形時間、循環時間などがその例です。
グッドマンは、これらの要素もまた、客観的な基準に基づいているのではなく、文化やコミュニティによって異なることを強調しました。
グッドマンは、世界と時間は、私たちが用いる象徴体系によって構成されるという革新的な視点を提示しました。彼の理論は、芸術、科学、歴史など、様々な分野における世界の見方を問い直し、多様な世界観の可能性を示唆しています。