クリエイティブな人のためのカーネマン「ファスト＆スロー」
人間の思考の仕組みを知ることで、より自由な発想を生み出せる
ダニエル・カーネマンの著書「ファスト＆スロー」は、人間の思考プロセスを「システム１（ファスト）」と「システム２（スロー）」の２つのシステムに分け、それぞれの特性や相互作用を解き明かしています。システム１は直感的で自動的な思考システムであり、経験や感情に基づいて瞬時に判断を下します。一方、システム２は論理的で意識的な思考システムであり、注意深く分析を行い、複雑な問題を解決します。
クリエイティブな活動においては、斬新なアイデアを生み出すために、直感やひらめきといったシステム１の働きが重要視されることがあります。しかし、「ファスト＆スロー」を読むことで、システム１が持つバイアスやヒューリスティクス（経験則）といった思考の落とし穴を理解することができます。これらの落とし穴は、時に偏った判断や誤った結論へと導く可能性があります。
例えば、利用可能性ヒューリスティクスは、記憶に残りやすい情報に過度に影響を受けて判断してしまう傾向を指します。最近ニュースで飛行機事故の報道を見た人は、飛行機に乗ることを危険だと感じるかもしれません。しかし、統計的には飛行機は非常に安全な乗り物です。このように、システム１は直感的で効率的である反面、偏りや誤りを含む可能性があることを認識しておく必要があります。
アイデアの評価や選択、意思決定をより客観的に行える
クリエイティブなプロセスでは、アイデアを生み出すだけでなく、それらを評価し、選択し、実行に移す必要があります。この過程においても、システム１とシステム２の相互作用を理解することは重要です。例えば、自分が気に入ったアイデアに対しては、肯定的な情報ばかりを集め、否定的な情報を無視してしまう確証バイアスが働く可能性があります。
「ファスト＆スロー」を読むことで、このような認知バイアスの存在を意識し、客観的な視点でアイデアを評価できるようになります。また、システム２を意識的に働かせることで、感情的な判断ではなく、論理的な根拠に基づいた意思決定を行うことができるようになります。
例えば、新しいプロジェクトを立ち上げる際に、その実現可能性やリスクを冷静に分析したり、複数のアイデアを比較検討する際に、それぞれのメリットとデメリットを客観的に評価したりすることができます。
他者の思考プロセスを理解し、より効果的なコミュニケーションを実現できる
クリエイティブな活動は、多くの場合、チームで行われます。チームメンバーとのコミュニケーションを円滑に進め、共通の目標に向かって協力していくためには、相手の思考プロセスを理解することが重要です。
「ファスト＆スロー」は、人間の思考の普遍的なメカニズムを解説しているため、他者の行動や発言の背景にある心理を理解するヒントを与えてくれます。例えば、相手が特定の意見に固執している場合、それは確証バイアスの影響を受けている可能性があります。そのような場合は、感情的に反論するのではなく、客観的なデータや根拠を示すことで、相手のシステム２に働きかけ、冷静な議論へと導くことができるかもしれません。
また、「ファスト＆スロー」で紹介されているフレーミング効果は、情報の提示方法によって相手の判断が変わることを示しています。同じ内容であっても、表現方法を変えることで、相手に与える印象を大きく変えることができます。クリエイティブなアイデアをプレゼンテーションする際や、クライアントに提案を行う際には、フレーミング効果を意識することで、より効果的にメッセージを伝えることができるでしょう。
このように、「ファスト＆スロー」で得られる知識は、クリエイティブな人の発想力、判断力、コミュニケーション能力を向上させる上で、大きな助けとなるでしょう。人間の思考の仕組みを深く理解することで、より自由で、より効果的なクリエイティブ活動を実現することができるはずです。
Amazonでファスト＆スロー の本を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。