クラヴァルの地理学史を読んだ後に読むべき本
地理学史から読み解く 環境問題の系譜
「クラヴァルの地理学史」を踏まえ、地理学という学問分野が環境問題とどのように関わってきたのか、その系譜を辿ることは非常に意義深いでしょう。本書では、古代ギリシャにおける自然哲学から現代の地球システム科学まで、各時代の地理学者が環境問題をどのように捉え、どのような分析枠組みを提供してきたのかを歴史的に考察します。
まず、古代ギリシャでは、ヒポクラテスが風土と病気の関係を論じたように、自然環境が人間の健康や文化に影響を与えるという考え方が芽生えていました。中世に入ると、イスラーム世界を中心に地理学が発展し、イブン・ハルドゥーンは乾燥地帯の生態系と遊牧民の社会構造との関係を分析しました。
18世紀後半からの産業革命は、自然環境に大きな影響を与えるようになり、地理学者たちは、環境問題に対して警鐘を鳴らし始めます。例えば、ジョージ・パーキンス・マーシュは、アメリカにおける森林破壊の現状を告発し、資源の持続可能な利用の重要性を訴えました。
20世紀後半に入ると、地球温暖化をはじめとする地球環境問題が深刻化し、地理学は、その解決に貢献できる学問分野として再び注目を集めています。リモートセンシングや地理情報システム（GIS）といった新たな技術を用いて、地球環境の変化をより正確に把握し、持続可能な社会の実現に向けた政策提言を行うことが求められています。
本書を読むことで、地理学が環境問題とどのように関わってきたのか、その歴史的変遷を理解することができます。また、現代社会が直面する環境問題の解決に向けて、地理学がどのような役割を果たせるのか、その可能性について考えるきっかけとなるでしょう。