ギデンズの社会学の新しい方法基準の構成
1. イントロダクション
ギデンズは、本書の冒頭で、社会学が直面する二つの理論的課題を提示します。一つは、社会学が自然科学の模倣から脱却し、独自の学問的立場を確立する必要があること。もう一つは、社会学が、マルクス主義や機能主義といった、従来のグランドセオリーを超えて、現代社会をより適切に分析できる新しい理論的枠組みを必要としていることです。
2. 機能主義の批判
ギデンズは、パーソンズに代表される機能主義を批判的に検討します。彼は、機能主義が社会システムの安定性や均衡を過度に強調し、社会変動や葛藤を軽視していると指摘します。また、機能主義が、行為者の主体性や行為の意味を十分に考慮していない点も批判の対象となります。
3. 構造主義の批判
ギデンズは、レヴィ＝ストロースに代表される構造主義に対しても批判を加えます。彼は、構造主義が、人間の行為を構造によって完全に決定されたものとみなし、行為者の主体性や自由意志を軽視していると批判します。また、構造主義が、社会変動や歴史的変化を説明する上で限界を持っている点も指摘します。
4. 構造化理論の提唱
ギデンズは、機能主義と構造主義の両者を批判的に検討した上で、自身の理論的立場である「構造化理論」を提唱します。構造化理論は、社会構造と人間の行為の相互作用を重視する理論です。彼は、社会構造は人間の行為によって創造・維持される一方で、人間の行為を制約するものでもあると主張します。
5. 近代性の解釈
ギデンズは、構造化理論を用いて、近代社会の特徴を分析します。彼は、近代社会は、伝統的な社会とは異なり、時間と空間の分離、専門家システムの発達、反射性に基づく自己同一性の形成といった特徴を持つと指摘します。また、近代社会は、グローバリゼーションの進展に伴い、リスクと不確実性の増大という新たな課題に直面していると主張します。
6. 社会学の新しい方法基準
ギデンズは、構造化理論に基づいて、社会学における新しい方法論を提唱します。彼は、社会学は、社会構造と人間の行為の相互作用を分析するために、「二重解釈学」と呼ばれる方法論を採用する必要があると主張します。二重解釈学とは、社会学者が、社会現象を解釈する際に、行為者自身の解釈と、社会学者の解釈の両方を考慮する必要があるという考え方です。