## ギデンズの社会学の新しい方法基準から学ぶ時代性
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近代性と後期近代性
アンソニー・ギデンズは、彼の著書『社会学の新しい方法基準』の中で、古典的な社会学理論、特に機能主義や構造主義が抱える問題点を指摘し、新たな社会学の枠組みを提示しました。彼は、社会構造と人間の行為の相互作用に着目し、「構造化」という概念を提唱しました。
ギデンズは、近代社会を「近代性」として捉え、伝統的な社会秩序が崩壊し、資本主義、産業主義、監視社会、軍事力という四つの要素によって特徴付けられるとしました。彼は、近代性を「脱伝統化」と「再帰性」によって規定されるダイナミックなプロセスとして理解しました。脱伝統化とは、伝統的な価値観や規範、慣習などが衰退し、人々の行動の指針や社会の統合原理としての役割を失っていくことを指します。再帰性とは、社会が自己言及的に、つまり絶えず自身を監視し、評価し、修正していくプロセスを意味します。
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後期近代性におけるリスクと信頼
さらにギデンズは、現代社会を「後期近代性」と捉え、グローバリゼーション、情報技術の進展、個人主義の台頭などによって、近代性が新たな段階に入ったと主張しました。彼は、後期近代性を「リスク社会」という言葉で表現しました。リスク社会とは、環境問題、金融危機、テロリズムなど、地球規模で複雑に絡み合ったリスクが顕在化し、人々の不安や不安定感が増大した社会を指します。
後期近代性において、人々は伝統的な価値観や権威に頼ることができず、自己責任において選択を迫られるようになっています。ギデンズは、このような状況下では「信頼」が重要な役割を果たすと指摘しました。信頼とは、他者の行為や制度の信頼性を評価し、それに基づいて行動することを意味します。私たちは、専門家の知識や制度の機能を信頼することで、複雑な社会を生きていくことができます。
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後期近代性におけるアイデンティティ
後期近代性においては、アイデンティティもまた流動化し、多様化しています。伝統的な社会では、性別、家族、地域共同体などがアイデンティティの拠り所となっていましたが、後期近代性においては、それらはもはや自明のものではなくなり、個人は自らアイデンティティを構築していくことが求められています。
ギデンズは、後期近代性におけるアイデンティティを「自己反省的プロジェクト」と呼びました。私たちは、さまざまな情報や経験に触れる中で、絶えず自己を問い直し、再定義していく必要があります。
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ギデンズの社会学の現代社会への示唆
ギデンズの社会学は、現代社会を理解するための重要な視点を提供しています。彼の理論は、リスク社会における個人の不安や不安定感、アイデンティティの危機などを分析する上で有効です。また、信頼の重要性を強調することで、社会統合のあり方を考える上での示唆を与えてくれます。