キルケゴールの死にいたる病に影響を与えた本
ヨブ記
ソーレン・キルケゴールの『死にいたる病』は、絶望の性質、特に存在の宗教的球面におけるその現れに関する複雑で多面的な探求です。キルケゴールはこの作品で、絶望を単なる感情状態としてではなく、自己と神との関係における人間の精神の持続的な闘いを明らかにする、より深い精神的状態として提示しています。この探求において、キルケゴールはヘブライ聖書、特にヨブ記から大きな影響を受けました。ヨブ記は、義人と苦しみの問題と、試練に直面した人間の信仰の脆弱さを扱っており、キルケゴール自身の絶望と信仰の存在論的性質に関する思索に豊かな土壌を提供しました。
ヨブ記は、神を畏れる無垢で裕福な人物であるヨブの物語です。サタンはヨブの信心深さを疑い、神に挑戦して彼の信仰を奪えば神を呪うだろうと主張します。神の許しを得て、サタンはヨブに一連の悲惨な不幸をもたらし、彼の富、子供たち、健康を奪います。耐え難い苦しみにもかかわらず、ヨブは神を呪うことを拒否し、彼の無実は彼の苦しみの説明を要求します。
ヨブの執拗な信仰と苦しみの理由に対する彼の要求は、キルケゴールの絶望の概念の中心に響き渡ります。キルケゴールにとって、絶望は自己と自己の存在との関係における不協和音から生じます。ヨブは、試練に直面して揺るぎない信仰の模範として描かれているように見えますが、キルケゴールはヨブの苦しみの中で絶望の微妙な形を認識しており、彼はそれを「無限なものへの絶望」と呼んでいます。これは、ヨブが本質的に彼の苦しみの理由の承認、彼の窮状の理由の具体的で理解できる説明のために無限に（神に）訴えているためです。
キルケゴールによれば、この絶望への訴えは、ヨブがまだ完全に自分自身を神に服従させていないことを示唆しています。彼はまだ自分の理解の範囲内で苦しみを調停しようとしており、それによって彼の有限な視点を無限の神的計画に主張しています。ヨブの絶望は、彼の信仰の欠如ではなく、彼の有限な人間の視点の限界と無限のものとの格闘における彼の闘争にあります。
さらに、ヨブの友人の登場は、「死にいたる病」で探求された絶望の別の側面に光を当てます。ヨブの友人は、慰めを提供し、彼の苦しみの理由を説明しようとして到着します。しかし、彼らの議論は、苦しみは罪の直接的な結果であるという、固定観念的で独善的な仮定に基づいています。彼らは本質的に、ヨブの窮状は彼の隠された罪への罰に違いないと主張し、彼に悔い改めて神に許しを求めるよう促します。
キルケゴールは、この種の誤った慰めと人間の判断を「他者への絶望」と特徴づけています。ヨブの友人は、彼ら自身の限られた教義的な理解に基づいてヨブの経験を定義し、判断しようとしました。そうすることで、彼らは彼の苦しみの深さと複雑さを本当に理解することができず、単に彼自身の絶望の穴に彼をさらに深く陥れました。
ヨブ記を通して、キルケゴールは、絶望を単なる悲しみや落胆の感情ではなく、自己と存在との関係における根本的な不協和音と見なしています。ヨブの苦しみと彼の友人の誤った慰めは、信仰の性質、苦しみの問題、人間の条件の限界についてのより深い探求のための存在論的な枠組みを提供します。キルケゴール自身の考えを形作ったヨブ記の要素を解き明かすことによって、「死にいたる病」は、私たち自身の存在論的不安を振り返り、絶望の中でさえ信仰と絶望の関係を理解するように私たちに挑戦します。