## キケロの老年について
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老年期の不当な非難について
「老年について」は、紀元前44年にマルクス・トゥッリウス・キケロによって書かれた対話篇です。この作品でキケロは、老齢期は人生で不幸で惨めな時期であるという一般的な認識に反論しています。彼は、老齢期にはそれ自体に固有の喜びと満足があり、人生の充実した実りある時期になり得ると主張します。
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老齢期に対する四つの非難
キケロは、老齢期に対する一般的な非難を四つ挙げ、それぞれに反論していきます。
1. **公務から退くことによる活動力の減退:** キケロは、老齢期になっても精神的な活動や学習意欲は衰えないと主張します。むしろ、経験と知識の蓄積により、より深い思考や洞察が可能になると説きます。
2. **体力の衰え:** キケロは、肉体的な衰えは避けられないと認めながらも、健康に気を配り、適度な運動を続けることで、老いても健やかな生活を送ることができると述べています。
3. **快楽の減少:** キケロは、肉体的な快楽は確かに減退するかもしれないが、知的な喜びや精神的な満足は増大すると主張します。
4. **死が近いことへの恐怖:** キケロは、死は自然なものであり、それを恐れるべきではないと説きます。むしろ、死は苦しみからの解放であり、新たな生の始まりである可能性もあると述べています。
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老齢期の利点
キケロは、老齢期には多くの利点があると主張します。例えば、長年の経験から得た知恵や洞察力、情熱から解放された冷静な判断力、周囲の人々からの尊敬などです。また、老齢期は自分自身の内面と向き合い、人生の意味を深く考えることができる貴重な時間であるとも述べています。
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模範となる人物像
キケロは、自身の主張を裏付けるために、歴史上の人物や自身の経験を例に挙げます。彼は、老いても精力的に活動し、社会に貢献した人物たちの生き様を描き出すことで、老齢期に対する肯定的な見方を提示します。
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作品の影響
「老年について」は、古代ローマ社会において老齢期に対する見方を大きく変えるきっかけとなりました。今日でも、老いることの意味や幸福な老後を送るためのヒントを与えてくれる古典として、多くの人々に愛読されています。