## キケロの義務についての美
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美徳としてのdecorumとhonestum
キケロの「義務について」の中で、美は単なる感覚的な喜びを超えた、道徳的に優れたものと密接に関係しています。彼は、ギリシャ語のプレポン(適切さ)に対応するラテン語の**decorum**という概念を用いて、美を表現します。これは、行動や発言、さらには人生全体が、あるべき秩序と調和を保っている状態を指します。
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美と道徳の調和
キケロにとって、真の美は外見的なものではなく、内面的な美徳と不可分に結びついています。彼は、人間にとって最も重要な美徳を**honestum** (名誉、高潔さ)と呼び、decorumと重ね合わせます。つまり、道徳的に正しい行動こそが、真に美しく、適切であると考えました。
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四つの基盤となる徳と美
キケロは、honestumを構成する四つの基盤となる徳 – 知恵、正義、勇気、節制 – を挙げ、それぞれの徳がdecorumとどのように関係するかを論じています。
* **知恵**は、物事を正しく判断し、適切な行動を選択することを可能にする徳です。
* **正義**は、他者との正しい関係を築き、社会の秩序を維持するために不可欠です。
* **勇気**は、困難に立ち向かい、正しいことを貫くための力を与えます。
* **節制**は、欲望や情熱を制御し、バランスのとれた行動を可能にします。
これらの徳が調和して発揮される時、人間の行動は美しく、賞賛に値するものとなります。
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実例を通した美の提示
キケロは、歴史上の偉人や神話、そして日常的な事例を豊富に引用しながら、抽象的な議論を具体的に説明しています。彼は、それぞれの状況において、どのような行動がdecorumにかなっており、どのような行動がそれから逸脱しているのかを明確に示すことで、読者に道徳的な判断力を養うことを促しました。
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美と実用性の調和
キケロは、道徳的な行動と実用的な利益が必ずしも対立するものではなく、むしろ調和しうると考えました。彼は、decorumに基づいた行動は、長期的に見て、個人にとっても社会にとっても最善の利益をもたらすと主張しました。