## キケロの義務についての技法
### 1. 対話形式による議論
キケロは「義務について」の中で、ストア派の哲学者パナエティオスの思想を基盤としながらも、息子マルクスへの手紙という形式を取り、対話形式で議論を進めています。これは、一方的な教訓を与えるのではなく、息子に自ら考えさせることで、より深く理解を促すための工夫と言えます。
### 2. 多様な事例の引用
キケロは抽象的な議論に終始するのではなく、ギリシャ・ローマの歴史や神話、文学作品から、具体的な事例を豊富に引用しています。これにより、読者は道徳的な問題をより身近に感じ、実践的な指針を得ることが可能となります。
### 3. 明快で簡潔なラテン語表現
キケロは「義務について」を、高度な哲学の知識がない人々にも理解できるよう、平易で洗練されたラテン語で記しています。短い文章と明確な論理展開を用いることで、読者の理解を助けると同時に、自らの主張を力強く印象づけています。