キケロの弁論術に影響を与えた本
アリストテレス著「弁論術」の影響
古代ローマの雄弁家、キケロの弁論術に多大な影響を与えた一冊として、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの著作「弁論術」が挙げられます。 「弁論術」は、アリストテレスが弁論、すなわちパブリックスピーキングに関する理論と実践を体系的にまとめた書物です。
「弁論術」の内容
「弁論術」では、弁論を構成する要素として、話者、聞き手、スピーチの内容、そしてスピーチが行われる状況の四つを挙げています。 そして、効果的な弁論を行うためには、聞き手の感情、論理、そして話者に対する信頼に基づいた説得が必要であると説いています。
アリストテレスは、聞き手の感情に訴えかける pathos(パトス)、論理や理性に訴えかける logos(ロゴス)、そして話者自身の資質によって聞き手を納得させる ethos(エトス)の三要素を巧みに使い分けることが重要であると説きました。 また、弁論を、政治、法廷、儀式の三つのジャンルに分類し、それぞれの目的に応じたスピーチの構成や表現方法を論じています。
キケロへの影響
キケロは、アリストテレスの「弁論術」を深く研究し、その理論を実践に適用することに努めました。 キケロの代表作である「弁論家について」や「ブルータス」などには、「弁論術」の影響が色濃く反映されています。 例えば、キケロは、アリストテレスの三要素説を踏まえ、効果的な弁論のためには、聞き手の感情を動かすだけでなく、論理的な思考を促し、話者自身の信頼性を高めることが不可欠であると説いています。
また、キケロは、アリストテレスが提唱した弁論の三つのジャンルをさらに発展させ、それぞれのジャンルに適したスピーチの構成や表現方法を詳細に論じています。 キケロは、アリストテレスの「弁論術」を単に模倣するのではなく、独自の解釈を加え、より実践的な弁論術の体系を構築していったと言えるでしょう。