キケロの弁論術について読む前に
古代ローマの社会と政治
キケロの弁論術を真に理解するには、それが生まれた時代背景と密接に関係していることを理解することが不可欠です。キケロが活躍した古代ローマは、共和制末期から帝政初期にかけての激動の時代でした。政治は貴族派と平民派の対立、内乱、そして権力闘争に明け暮れていました。
このような時代背景の中で、雄弁術は単なる言葉の技巧ではなく、政治的な影響力を持つための強力な武器でした。キケロ自身も優れた弁論家として政界で活躍し、その演説は多くの人々に影響を与えました。 彼の弁論術は、単なる理論ではなく、当時の政治状況や社会情勢を背景に、実践を通して磨かれたものでした。
キケロの人生と業績
キケロは、弁論家であると同時に、哲学者、政治家、文筆家としても非凡な才能を発揮しました。彼の思想や行動は、古代ローマ社会に大きな影響を与え、現代においても高く評価されています。彼の弁論術を理解するためには、彼の人生経験、彼が直面した政治的課題、そして彼が抱いていた理想などを知ることが重要です。
例えば、彼が政治的弾圧を受けながらも言論の自由を貫こうとした姿勢、あるいは共和制の理念を守ろうと腐敗した権力と戦った経験などは、彼の弁論術に独特の力強さと説得力を与えています。
修辞学の基本的な知識
キケロの弁論術は、古代ギリシャに端を発する修辞学の伝統を受け継ぎ、それをさらに発展させたものです。そのため、彼の著作を理解するには、修辞学の基本的な知識、例えば、
* ロゴス(論理)、
* エトス(倫理)、
* パトス(情熱)
といった概念や、
* 発想、
* 構成、
* 文体、
* 記憶、
* 朗読
といった弁論術の五部門について、事前にある程度の知識を持っておくことが役立ちます。