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キケロの弁論術についての発想

## キケロの弁論術についての発想

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雄弁術への傾倒

キケロは、古代ローマにおいて卓越した弁論家、政治家、哲学者として知られており、その影響力は古代ローマ社会にとどまらず、後世の西洋思想にも大きな影響を与えました。特に、雄弁術に関しては、古代ギリシャの伝統を受け継ぎつつも、独自の理論体系を構築し、後世の模範とされました。

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ギリシャ修辞学の影響

キケロの雄弁術に対する考え方は、古代ギリシャの修辞学、特にイソクラテスやプラトンの影響を強く受けています。イソクラテスは、雄弁家は単なる技術者ではなく、広範な教養と倫理観を備えた市民であるべきだと主張しました。 また、プラトンは、真の雄弁術は、単に聴衆を説得する技術ではなく、真実を追求し、魂を善へと導くものであると説きました。キケロは、これらの思想を吸収し、自身の雄弁術論の基盤としました。

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理想の弁論家像

キケロは、理想の弁論家像として、「ウィル・ボヌス」、「完璧な弁論家」を掲げました。これは単なる雄弁の技術に長けた人物ではなく、哲学、歴史、法律など幅広い教養を持ち、倫理観と正義感を備えた、まさに理想的な市民像と重なります。 彼の著作である『弁論家について』では、この「ウィル・ボヌス」について詳細に論じられています。

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弁論術の構成要素

キケロは、弁論術を構成する要素として、以下の五つを挙げました。

1. **発想術 (Inventio):** 効果的な論拠や証明方法を見出す技術
2. **構成術 (Dispositio):** 論点を論理的に配置し、説得力のある構成を構築する技術
3. **文体論 (Elocutio):** 目的に応じた適切な言葉遣いや表現技法を用いる技術
4. **記憶術 (Memoria):** スピーチの内容を記憶する技術
5. **伝達術 (Actio):** 声の調子、表情、身振りなどを駆使して効果的に伝える技術

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ローマ社会における弁論術

古代ローマ社会において、弁論術は単なる学問ではなく、政治や法律の場において必須の実践的なスキルでした。 フォーラムや元老院といった公の場では、雄弁な弁論によって自らの主張を展開し、人々を説得することが求められました。 キケロ自身、卓越した弁論の技術によって数々の訴訟を勝利に導き、政治家としての地位を築き上げました。 彼の弁論術に関する著作は、古代ローマ社会における雄弁術の重要性を物語っています。

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