## キケロの友情について
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古代ローマにおける友情
キケロが活躍した古代ローマ社会では、友情(amicitia)は単なる私的な感情を超えた、政治や社会を支える重要な要素とみなされていました。友情は相互の利益や尊敬に基づき、パトロヌス・クリアエンタス関係(有力者と被保護者の関係)にも通じる、強い紐帯によって結ばれていました。
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「友情について」の内容
「友情について」(De Amicitia)は、紀元前44年にキケロが、親しい友人アッティクスに宛てて書いた対話形式の著作です。この作品は、紀元前129年に亡くなったローマの政治家スッピキウス・ガルスの追悼として、彼の義理の息子たちとの対話を舞台に、友情の定義、価値、維持に必要な条件などが論じられています。
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「友情について」における友情の定義
キケロは作中において、友情を「あらゆる神聖なるものと同様、高潔な人々の間にのみ存在しうるものであり、あらゆる善きものの中でも最も貴重なもの」と定義しています。 彼は、真の友情は徳(virtus)に基づくものであり、共通の善意、誠実さ、信頼関係、そして互いの幸福を願う気持ちから生まれると説いています。
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「友情について」における友情の価値
キケロは、友情が人生にもたらす様々な恩恵を強調しています。彼は、友情は困難な時期の支えとなり、喜びを分かち合い、助言を与え合い、そして互いに高め合うことで、人間をより善き存在へと導くと述べています。
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「友情について」における友情の維持
キケロは、真の友情を維持するためには、互いに寛容と理解を示し、嫉妬や競争心を抑え、そして常に相手への配慮を忘れないことが重要だと説いています。また、友情関係においても、時として意見の相違が生じることは避けられないとし、その際には率直な対話を通じて解決を図るべきだと主張しています。