## キケロの友情についての思想的背景
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古代ギリシャ哲学の影響
キケロの友情論は、ストア哲学よりも、アカデメイア哲学、特にプラトンの影響を強く受けています。「友情について」は、実際の人物であるガイウス・ラエリウスの口を通して語られる対話篇という形式をとっていますが、これはプラトンの対話篇の影響が色濃いと言えます。また、作中で言及される古代ギリシャの詩人や哲学者たちの言葉は、キケロの友情論が当時のギリシャ文化における教養と深く結びついていることを示しています。
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ローマにおける友情の概念
ローマ社会において、友情(amicitia)は個人的な結びつきを超えた、政治・社会的な意味を持つ重要なものでした。有力者同士の友情は互いの立場を強固なものとし、政治的な同盟関係を築く上でも重要な役割を果たしました。キケロ自身、自身とアッティクスとの友情を非常に大切にしており、膨大な量の書簡をやり取りしたことはよく知られています。しかし、キケロは真の友情は利害関係や打算に基づくものではなく、徳に基づくものであると強調します。
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「友情について」執筆の背景
「友情について」は、紀元前44年に、ガイウス・ユリウス・カエサルが暗殺された後に書かれました。キケロはこの事件に大きな衝撃を受け、政治的に不安定な状況の中で、自身の哲学的な探求に慰めを見出そうとしていました。彼は「友情について」の中で、理想的な友情の姿を描くことによって、混乱した社会の中で人々が拠り所とすべき普遍的な価値観を示そうとしたと考えられます。