## キケロの友情についての価値
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古代ローマにおける友情の概念
古代ローマ社会において、友情(amicitia)は単なる私的な感情の領域を超え、政治や社会秩序を支える重要な要素とされていました。互恵関係や義務、忠誠心といった概念と密接に結びつき、パトロナス・クリアンテス関係(保護者・被保護者関係)にも通じる重要な社会的紐帯として機能していました。
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「キケロの友情について」における友情の定義
「キケロの友情について(De Amicitia)」は、紀元前44年にキケロによって著された、友情をテーマとした対話篇です。この作品の中でキケロは、ガイウス・レピドゥスの死を悼むガイウス・ファンニウスを相手に、理想的な友情の姿について論じています。
キケロは、真の友情は高潔な人々の間でのみ成立するとし、その本質を「あらゆる事柄における完全な合意、すなわち、敬愛と愛情を伴った意見の一致」と定義しています。
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徳の重要性
キケロは、真の友情の基礎となるのは「徳(virtus)」であると強調しています。徳とは、知性、正義、勇気、節制といった、古代ローマ社会において高く評価された人間的な資質を指します。
キケロによれば、徳の高い人物は互いに尊敬と信頼の念を抱き、共通の価値観に基づいて行動するため、強固な友情を築くことができるとしています。逆に、徳を欠いた人物の間には、利害関係に基づいた一時的な関係しか生まれないとされます。
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友情の効用
「キケロの友情について」では、友情がもたらす様々な効用についても論じられています。
キケロは、真の友人は人生における最大の財産であるとし、喜びを分かち合い、悲しみを慰め合うことで、互いに精神的な支えとなると述べています。また、友人は互いに助言を与え合い、励まし合うことで、自己の成長を促す存在でもあるとされています。
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政治との関係
キケロは、友情が政治にも大きな影響を与えると考えていました。
彼は、真の友情で結ばれた政治家たちは、私利ではなく公益を優先して行動し、国と市民のために最善を尽くすと考えていました。
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「キケロの友情について」の影響
「キケロの友情について」は、古代ローマ社会において広く読まれ、友情に関する古典的なテキストとして後世に大きな影響を与えました。
ルネサンス期以降、人文主義者たちによって再評価され、友情の重要性を説く作品として、多くの思想家や文学者に影響を与え続けました。