## キケロの共和国について
共和政体の定義と起源について
『国家論』(De re publica)は、マルクス・トゥッリウス・キケロによって紀元前54年から紀元前51年にかけて執筆された対話篇です。ローマの政治体制と理想的な国家のあり方を論じた作品として知られています。
作中では、紀元前129年の設定で、スキピオ・アエミリアヌス、ガイウス・ラエリウス・サピエンスといった当時のローマの著名人を登場人物として、共和政体について対話が繰り広げられます。
主要なテーマ
対話の中で、キケロは共和政体の本質、長所、短所、そして維持に必要な要素について考察を深めていきます。
主なテーマとしては下記が挙げられます。
* 共和政体(res publica)の定義: キケロは共和政体を「多数の共通の利益のために統治される国家」と定義し、個人の利益ではなく、公共の利益を重視する体制であることを強調しています。
* 理想的な政体: キケロは、王政、貴族政、民主政の長所と短所を分析し、それぞれの要素をバランスよく組み合わせた混合政体が理想的であると主張します。
* 政治体制の変遷: キケロは、政体が時間の経過とともに腐敗し、崩壊していく過程を論じ、共和政体を維持するためには、市民の徳と政治家の指導が不可欠であると説いています。
* 正義と法の支配: キケロは、共和政体を支える基盤として、正義と法の支配の重要性を説き、法は万人に共通の尺度でなければならず、恣意的な支配を排除しなければならないと主張します。
現存状況と影響
『国家論』は、古代ローマの政治思想を理解する上で重要な文献であると同時に、西洋政治思想史にも多大な影響を与えました。
しかし、原本は長い間失われており、断片的にしか現存していません。
19世紀になって、アウグスティヌスの『神の国』の写本から発見された部分が最も多く、現在でも研究が進められています。