## キケロの共和国について
共和政ローマの政治思想
キケロの『国家論』は、共和政ローマ末期の紀元前54年から紀元前51年にかけて執筆されました。全6巻が構想されていましたが、キケロが存命中に完成したのは3巻までで、残りは断片的にしか残っていません。
作品の内容と構成
『国家論』は、紀元前129年の設定で、スキピオ・アエミリアヌスとその友人たちが繰り広げる対話篇という形式をとっています。
* **第1巻**: 理想的な国家体制や正義について論じられます。
* **第2巻**: ローマ国家の起源と発展、そして政治制度について解説されます。
* **第3巻**: 国家と法の関係、そして正義と法の関係が議論されます。
* **第4巻**: 教育について論じられます。(断片的にのみ現存)
* **第5巻**: 政治家の役割について論じられます。(断片的にのみ現存)
* **第6巻**: 理想的な政治指導者について論じられます。(現存せず)
執筆の背景
『国家論』は、ローマが共和政の危機に瀕していた時代に書かれました。キケロは、当時の政治腐敗や社会不安を憂慮し、共和政の理想と伝統を訴えかけることで、国家の再建を目指しました。
政治思想
キケロは、プラトンの『国家』などのギリシャ哲学の影響を受けながらも、ローマの伝統や歴史を重視した独自の共和政論を展開しました。
* **混合政体論**: キケロは、王政・貴族政・民衆政の長所を併せ持つ混合政体を理想としました。
* **法の支配**: 法の支配こそが、国家の秩序と個人の自由を保障すると考えました。
* **政治家の役割**: 政治家は、公共善のために尽力する義務を負うとしました。
影響
『国家論』は、古代ローマだけでなく、その後の西洋政治思想にも大きな影響を与えました。特に、ルネサンス期や啓蒙主義時代には、共和政の理念を再評価する上で重要なテキストとして読まれました。