## キケロの『弁論術について』とアートとの関係
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修辞学と芸術の結びつき
キケロの時代、そして古代ギリシャに遡るさらに前の時代においてさえ、修辞学、すなわち説得の技術は、単なる言語の技巧を超えたものと見なされていました。それは、聴衆を魅了し、説得し、動かすための洗練された芸術形態とみなされていました。
キケロ自身、その著作『弁論術について』の中で、この見解を明確に示しています。彼は、弁論術を絵画や彫刻のように、綿密な計画、熟練した実行、そして美的感覚を必要とする技術として描写しています。
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『弁論術について』における芸術的要素
『弁論術について』の中では、弁論術の三つの要素、すなわち *inventio*(発想)、*dispositio*(構成)、*elocutio*(文体)が論じられますが、これらの要素は芸術と深く関連しています。
* **Inventio** は、効果的な論拠や証拠を「発見」するプロセスであり、これは芸術家が作品の主題やテーマを見つけるプロセスに類似しています。
* **Dispositio** は、論拠や証拠を最も説得力のある順序に「配置」することに関わり、これは芸術家が作品を構成する principles of design (デザインの原則)と共通点があります。
* **Elocutio** は、適切な言葉遣い、リズム、比喩を用いて、論説を「美しく飾る」ことに焦点を当て、これは芸術における様式や表現技法に相当します。
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キケロと芸術の重要性
キケロは、優れた弁論家は、単に論理的な思考力を持つだけでなく、幅広い教養と洗練された美的感覚を持つ必要があると考えていました。彼は、詩、演劇、音楽、そして視覚芸術など、様々な芸術分野の知識を深めることを奨励していました。
なぜなら、これらの芸術分野は、人間の感情や心理に対する深い理解を提供し、それが聴衆を魅了し、説得するためのより効果的な方法を見つけることにつながると考えたからです。