## ガダマーの真理と方法の対称性
解釈における主体と客体の対称性
ガダマーは、伝統や歴史を介した解釈行為において、解釈者と解釈対象との間に絶対的な主体と客体の分離は成立しないと主張します。「真理と方法」では、この関係性を理解するために、従来の認識論的な主体と客体の二項対立図式を乗り越える必要性を説いています。
伝統や歴史的テクストは、解釈者の先入見や歴史的状況と無関係に存在する客観的な対象ではありません。解釈者は、自身の属する歴史や文化によって規定された先入見や偏見を通して、テクストと対峙します。
しかし、テクストは解釈者の先入見に受動的に解釈されるだけの存在ではありません。テクストは、それ自体が歴史の中で形成された意味と価値観を有しており、解釈者に問いかけ、解釈者の先入見を揺さぶり、変容させます。
対話としての解釈
ガダマーは、このような解釈における主体と客体の相互作用的な関係性を、「対話」という概念を用いて説明します。解釈とは、テクストとの対話を通じて、自身の先入見を問い直し、新たな理解の地平を拓く行為です。
テクストは、解釈者に対して一方的に意味を押し付けるのではなく、対話を通じて解釈者の理解を深め、新たな視点を提供します。解釈者は、テクストとの対話を通じて、自身の先入見の限界を認識し、より深い理解へと導かれます。
歴史的意識の対称性
ガダマーは、解釈における主体と客体の対称性は、歴史的意識の対称性と密接に関係していると指摘します。歴史的意識とは、私たち自身が歴史の中に位置づけられており、歴史によって規定されていることを自覚することです。
解釈者は、自身の歴史的状況を自覚することで、自身の先入見や偏見を客観的に捉えることができます。同時に、解釈対象であるテクストもまた、特定の歴史的状況の中で生み出されたものであることを認識する必要があります。
解釈とは、解釈者とテクスト、それぞれの歴史的状況が交差し、新たな意味が生成される場であると言えるでしょう。