## カーの歴史とは何か の普遍性
### 歴史家の役割とは何か?
E・H・カーの著書『歴史とは何か』は、歴史学の根本的な問題提起を通じて、歴史という学問の性質と限界、そして歴史家自身の役割について鋭く考察した古典的名著です。特に、歴史家の主観と客観性の問題、歴史における事実と解釈の相互作用、そして歴史の持つ必然性と偶然性といったテーマは、出版から半世紀以上を経た現在においても、我々に重要な示唆を与え続けています。
### 歴史における事実と解釈の相互作用とは?
カーは、歴史は単なる過去の出来事の羅列ではなく、歴史家による選択と解釈を経て初めて意味を持つと主張します。歴史家は、膨大な過去の資料の中から、自身の関心や問題意識に基づいて取捨選択を行い、それらを独自の解釈を加えながら叙述することで歴史を構築します。
### 歴史における主観と客観性のバランスとは?
しかし、歴史家の解釈は、その時代の社会通念や歴史家自身の価値観に影響を受けるため、完全に客観的なものとはなり得ません。カーは、歴史家は自身の主観性を自覚し、それを歴史叙述に反映させることを恐れてはならないとしつつも、同時に、偏った解釈に陥ることなく、可能な限り客観性を追求する努力も必要であると説いています。
### 歴史の普遍性とは?
カーの主張は、歴史は時代や立場によって変化する相対的なものであり、唯一絶対の真実など存在しないという、ある種の相対主義的な見解と解釈されることがあります。しかし、彼は決して歴史の客観性を否定していたわけではありません。カーは、歴史家は過去の出来事に対して誠実に向き合い、証拠に基づいた論理的な推論を展開することによって、たとえ時代を超えて完全に共有できないとしても、一定の客観性と普遍性を持つ歴史認識に到達できると考えていました。