## カーの歴史とは何かの思考の枠組み
歴史家と事実の関係性
E・H・カーは、歴史とは何かという問いに対して、歴史家と歴史的事実の関係性に着目しました。彼は、歴史的事実そのものは無数に存在し、それ自体には意味がないと主張しました。歴史家は、自身の興味や関心、置かれている時代背景などに基づいて、無数の歴史的事実の中から取捨選択を行い、それらを解釈することで歴史を構築していくのです。
このことから、カーは歴史とは「歴史家と歴史的事実との間の尽きることを知らない対話」であると述べています。歴史家は、過去の事実に対して一方的に意味を押し付けるのではなく、絶えず対話し、解釈を深めていく必要があるのです。
歴史の客観性と主観性
カーは、歴史の客観性と主観性の問題についても深く考察しました。彼は、歴史家が完全に客観的な立場をとることは不可能であると主張しました。歴史家は、自身の価値観や思想、時代背景などから完全に自由になることはできないため、どうしても主観的な解釈が入り込んでしまうからです。
しかし、だからといって歴史は単なる主観的な物語になってしまうわけではありません。歴史家は、可能な限り客観的な証拠に基づいて事実を検証し、多様な解釈を比較検討することで、より妥当性の高い歴史像を構築していくことができます。
歴史の有用性
カーは、歴史を学ぶことは、過去の出来事から教訓を引き出し、未来を切り開くために役立つと述べています。歴史は、私たちに人間の行動の複雑さや社会の変遷、様々な文化や思想の存在を教えてくれます。これらの知識は、私たちが現代社会の課題を理解し、より良い未来を創造するために必要不可欠なものです。
ただし、カーは歴史から直接的な答えや解決策を見出すことはできないとも述べています。歴史は、あくまでも過去の出来事の記録であり、未来を予測するための水晶玉ではありません。歴史から学び、未来に活かしていくためには、私たち自身の批判的な思考力と想像力が求められます。