Skip to content Skip to footer

カントの純粋理性批判の感性

## カントの純粋理性批判の感性

###

感性とは何か

カントにおいて感性(Sinnlichkeit)とは、我々が事物を知覚する能力、すなわち対象を感官に受容する能力のことです。
ただし、これは単に五感の働きを指すものではありません。
カントは感性を、受動的な**受容力**と、能動的に感覚を秩序付ける**形式**の二つの側面から捉えます。

###

感性の受容性

カントは、我々の認識は経験に始まる、という経験論の立場を取ります。
そして、この経験の基礎となるのが、外界からの作用を受容する感性の働きです。
外部からの刺激を感覚器官を通して受け取ることで、我々は初めて認識の素材となりうるものを得ます。
この意味で、感性は**受容性**を持つと言えます。

###

感性の形式:時間と空間

感性は単に受動的に感覚を受容するだけではありません。
カントは、感覚を秩序付け、認識を可能にする**感性の形式**という独自の概念を導入します。
この感性の形式には、**時間**と**空間**の二つがあります。

時間と空間は、外界から感覚によって与えられるものではなく、認識の枠組みとして**アプリオリ**(先天的に)我々に備わっているものです。
言い換えれば、時間と空間は、あらゆる経験に先立って成立しており、経験の内容を規定するものです。
例えば、我々は何かを見る時、それが赤色であるとか、丸い形をしているといった具体的な内容以前に、それが時間的に変化するものであり、空間的に広がりを持つものとして捉えます。
これは、時間と空間が感性の形式として、経験を成立させるための条件となっていることを示しています。

###

現象と物自体

時間と空間という感性の形式によって秩序付けられた経験の内容を、カントは**現象**と呼びます。
現象は、我々が認識しうる世界の姿です。
一方で、時間と空間の枠組みを超えた、認識の対象となる「もの」そのものは、**物自体**と呼ばれます。
物自体は、感性の形式によって条件付けられていないがゆえに、我々には認識不可能なものです。

カントは感性を、外界からの作用を受容するだけの受動的な能力ではなく、時間と空間という形式によって感覚を秩序づけ、現象としての認識を可能にする能動的な能力として捉え直しました。
この感性の理論は、その後の哲学や認識論に大きな影響を与え、現代においてもなお重要な議論の的となっています。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5