## カントの永遠平和のためにの対極
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カール・フォン・クラウゼヴィッツ著「戦争論」
カントの「永遠平和のために」が恒久平和の実現に向けた思想を提示しているのに対し、クラウゼヴィッツの「戦争論」は戦争を政治の延長線上にある現実的な行為として捉え、その本質や法則を分析しています。
「戦争論」は、ナポレオン戦争の経験を踏まえ、戦争を単なる軍事的な衝突ではなく、政治目的を達成するための手段として位置付けています。クラウゼヴィッツは、戦争には理性では完全に制御できない、暴力、憎悪、敵意といった情熱的な側面が内在すると指摘し、戦争の予測不可能性と複雑さを強調しています。
「戦争論」は、戦争の目的、手段、そして両者の関係について深く考察し、攻防の力関係、兵站の重要性、指導者の役割といった軍事戦略の原則を提示しています。 また、戦争は理論的に完全に掌握できるものではなく、常に不確実性と摩擦を孕んでいることを強調しています。
これらの点は、「永遠平和のために」が提示する理性に基づいた平和構築の理想とは対照的であり、「戦争論」は国際関係における力の論理、国家間の利害対立、そして戦争の現実を冷徹に描き出していると言えるでしょう。