カントの実践理性批判の位置づけ
カントの三大批判書における位置
イマヌエル・カントの主著として知られる三大批判書、すなわち『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』のうち、『実践理性批判』は二番目に位置づけられます。1781年に出版された『純粋理性批判』では、人間の認識能力を批判的に検討し、形而上学の基礎づけを試みました。しかし、この試みは成功したとは言い切れず、むしろ形而上学の限界を露呈する結果となりました。
実践理性の批判的検討
そこでカントは、1788年に出版された『実践理性批判』において、人間の理性の実践的な側面に目を向けます。ここでは、道徳や自由、そして神の存在といった形而上学的な問題が、実践理性の観点から論じられます。つまり、我々がどのように行為すべきか、という倫理的な問いから出発し、その基礎を人間の理性の中に探求していくわけです。
道徳法則と自由の概念
『実践理性批判』の中心的な主張は、人間の理性自身が道徳法則を内包しているというものです。カントはこの法則を「仮言命法」と区別して「定言命法」と呼び、「汝の意志の格率が、つねに同時に普遍的な立法の原理として妥当するように行為せよ」という形で表現しました。この定言命法に従うことこそが、人間の自由を実現する道であるとカントは考えました。
形而上学への橋渡し
『純粋理性批判』では否定的に扱われた神や魂の不滅性といった形而上学的な理念も、『実践理性批判』においては、道徳的な行為の要請として肯定的に捉え直されます。ただし、あくまでこれらは理性によって認識される対象ではなく、実践的な要請として要請されるものであるという点に注意が必要です。
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