カントの実践理性批判と作者
カントの生涯と著作活動
イマヌエル・カントは、1724年、東プロイセンのケーニヒスベルク(現ロシア領カリーニングラード)で生まれました。敬虔な家庭環境のもとで育ち、1740年にケーニヒスベルク大学に入学。哲学、数学、自然科学などを学びました。その後、家庭教師などをしながら研究を続け、1755年にはケーニヒスベルク大学で私講師となります。1770年には論理学と形而上学の正教授に就任し、1797年にその職を辞するまで、ケーニヒスベルクで生涯を送りました。
カントは、批判期と呼ばれる後期において、『純粋理性批判』(1781年)、『実践理性批判』(1788年)、『判断力批判』(1790年)という三つの批判書を著し、西洋哲学に大きな影響を与えました。その他にも、『プロレゴメナ』(1783年)、『道徳形而上学の基礎づけ』(1785年)などの重要な著作を残しています。
『実践理性批判』の位置づけ
『実践理性批判』は、1788年に出版されたカントの主著の一つです。先行する『純粋理性批判』では、人間の認識能力の限界を明らかにし、形而上学の伝統的な試みに対して批判的な立場をとりました。
『実践理性批判』は、『純粋理性批判』で示された認識論を踏まえつつ、道徳や自由といった実践的な問題を考察しています。カントは、人間の理性には、認識能力である理論理性と、行為を導く実践理性があるとしました。『実践理性批判』では、この実践理性を分析し、道徳法則の根拠を明らかにすることを試みています。
作者と著作の関係
カントは、『実践理性批判』において、人間の道徳的行為の根拠を、経験的なものから独立したアプリオリな実践理性に求めました。そして、道徳法則を「汝の意志の máxima が、常に同時に普遍的な立法の原理となるように行為せよ」という定言命法として定式化しました。
『実践理性批判』は、カント自身の哲学体系において極めて重要な位置を占めており、後世の道徳哲学、倫理学に多大な影響を与えました。