## カントの判断力批判の話法
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概念と直観の橋渡し
カントは『純粋理性批判』において、人間の認識は感性と悟性という二つの根本能力の協働によって成立することを明らかにしました。感性は対象を感覚的に捉える能力であり、悟性は概念を用いて思考する能力です。そして、この両者を結びつけるものが「想像力」です。想像力は、感覚的材料に基づきつつも、それを自由に操作することで、概念に合致する形象を創り出す力です。
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判断力の役割
『判断力批判』は、この想像力と密接に結びついた「判断力」に焦点を当てています。判断力は、個別の具体的なものと一般的な規則とを媒介し、個別なものを一般的な規則のもとに位置づける能力です。すなわち、判断力は、与えられた個別の対象が、どのような規則のもとにあるのかを判断する力です。
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美的判断と目的論的判断
カントは判断力を二つに分類します。一つは「美的判断力」であり、もう一つは「目的論的判断力」です。美的判断力は、対象の形式的な調和に基づいて快あるいは不快を判断する能力です。これは、対象が特定の概念に合致するか否かとは無関係に、対象そのものの形式から生じる感覚的な満足感に基づく判断です。一方、目的論的判断力は、自然物の形態や機能に目的を見出す判断力です。自然物自体には目的や意図は存在しませんが、人間は自然物を理解するために、あたかも目的に従って存在しているかのように判断します。
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反省的判断力
美的判断と目的論的判断は、いずれも「反省的判断力」として位置づけられます。反省的判断力は、あらかじめ与えられた規則に基づいて判断を下すのではなく、むしろ個別の事例を通じて、新たな規則を見出すという特徴を持っています。これは、既知の規則を適用する「決定的な判断力」と対比されます。
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アナロジーの活用
『判断力批判』においてカントは、「アナロジー」を用いた議論を展開します。アナロジーとは、二つの異なる事象の間にある類似性に基づいて、一方の事象から他方の事象について推論する思考方法です。カントは、自然と芸術、自然と自由意志といった一見異なる領域の間のアナロジーを指摘することで、判断力の働きを明らかにしようと試みています。