カントの判断力批判
美的判断力について
カントは、判断力批判において、人間の認識能力を三つの能力に分けます。すなわち、感性、悟性、理性です。感性は感覚的に与えられたものを受容する能力、悟性は概念を用いて対象を認識する能力、理性は理念を用いて世界の全体像を把握しようとする能力です。そして、この三つの能力を媒介するのが判断力です。判断力とは、個別のものを一般的な規則と結びつける能力のことです。
美的判断の四つの契機
カントは美的判断を分析し、それが四つの契機を持っていることを明らかにします。
* **第一契機：快・不快**
美的判断は、対象が自分に快あるいは不快を与えるかどうかに基づいてなされます。
* **第二契機：質**
美的判断は、対象の質に基づいてなされます。ただし、これは概念に基づくものではなく、対象が感覚に与える直接的な印象に基づくものです。
* **第三契機：目的適合性の形式**
美しいものは、あたかも何らかの目的のために作られたかのように見えますが、実際には具体的な目的を持っているわけではありません。
* **第四契機：必然性**
美的判断は、主観的なものではありますが、単なる個人的な好みではありません。美しいと感じるためには、すべての人が同じように感じなければならないという、ある種の普遍的な妥当性が必要です。
崇高の分析
カントは、美しさだけでなく、崇高さもまた重要な審美的経験であると考えました。 美しさとは異なり、崇高さは、私たちの感覚や想像力を圧倒するような、巨大なものや強力なものによって引き起こされます。
天才
カントは、芸術作品を創造する天才の概念についても考察しています。 カントによれば、天才とは、規則に従って作品を作るのではなく、自然によって与えられた特別な才能によって、新しい規則を創造する人のことを指します。
自然目的
カントは、自然界の事物の中には、あたかも目的を持って作られたかのように見えるものがあると指摘します。 例えば、生物の複雑な構造や機能は、何らかの知性によって設計されたかのようにも見えます。