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カントの人倫の形而上学・法論の構成

カントの人倫の形而上学・法論の構成

序論

『人倫の形而上学』は、「序論」と「法論」「徳論」の二部構成からなります。このうち「法論」が『人倫の形而上学・法論』に該当します。「法論」の前に置かれた「序論」は、道徳全体のうち「法論」の位置づけを明らかにする役割を担います。

カントはまず、「善い意志」のみが無条件に善いものだと主張します。そして、意志の善さは行為の結果ではなく、行為をなす際の格率(主観的な行為の原理)によって決まるとされます。この格率が普遍的法則となることを意志すれば、その意志は道徳的に善いということになります。

第一部 法の権利論

第一部「法の権利論」は、「私法の権利」「公法の権利」「世界市民法の権利」の三つの部分から成り立っています。ここでは、人間の外的自由に関する権利、つまり他の人間から侵害されない権利が扱われます。

「私法の権利」では、所有権や契約など、個人と個人の間の権利関係が論じられます。「公法の権利」では、国家と個人の関係、つまり国家の成立や政治体制が考察されます。「世界市民法の権利」では、国家間の関係や戦争と平和の問題が扱われます。

カントは、法とは「各人の自由が他のすべての人の自由と両立しうるような外的行為の普遍的法則」であると定義します。そして、法に反しない限り、人間は自由に行動する権利を持つと主張します。

第二部 法適用論(倫理学の教説)

第二部「法適用論(倫理学の教説)」では、第一部の抽象的な法の概念を具体的な事例に適用する方法が論じられます。

カントは、法の適用には「道徳の二元論」の視点が必要であると主張します。道徳の二元論とは、人間の意志には「感性の領域」と「理性領域」の二つの側面があるという考え方です。感性の領域は、欲望や感情など、経験に基づく主観的な領域です。一方、理性領域は、理性に基づく客観的な領域です。

カントによれば、法の適用においては、感性の領域の要素を排除し、理性領域のみに基づいて判断しなければなりません。しかし、現実の人間は感性の影響を完全に排除することはできません。そのため、法の適用は常に困難を伴うものとなります。

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