## カントの人倫の形而上学・法論の案内
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はじめに
『人倫の形而上学・法論』(Metaphysik der Sitten, Rechtslehre)は、1797年に刊行されたイマヌエル・カントの主著の一つです。 本書は、人間の自由と道徳の根拠を、人間の理性に内在する「道徳法則」に求め、それを実践的に考察することで、法と国家のあり方を示そうとした書です。
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構成
本書は、「序論」と以下の二部構成からなります。
* **第一部 法論への形而上学的序論**
* **第二部 法論**
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内容
**序論** では、本書全体に関わる重要な概念規定や方法論が示されます。 カントはまず、倫理学を「徳論」と「法論」に分けます。
* **徳論** は個人の内面的な道徳を扱います。
* **法論** は、他者との関係における外的行為を規定するものであり、本書の主題となります。
カントは、法の根拠を、個人の恣意的な欲望や感情ではなく、人間の理性に apriori に備わっている「純粋理性」に求めようとします。 そして、その純粋理性から導かれる絶対的な命令である「定言命法」が道徳法則の基礎となります。
**第一部 法論への形而上学的序論** では、法の概念、権利の概念、そして正義の原則などが、道徳法則からどのように導き出せるのかが論じられます。 特に重要なのは、人の自由を相互に両立させるための原理としての「法」の概念と、他者に対して一定の行為を要求できる「権利」の概念です。
カントはここで有名な定言命法の定式の一つである「人格の目的としての定式」を提示し、人間を単なる手段ではなく、常に目的として扱わなければならないと主張します。
**第二部 法論** では、第一部の議論を踏まえ、具体的な法的権利や義務が論じられます。 本書では、私法と公法の二つの領域が扱われます。
* **私法** では、個人の自由と財産に関する権利と義務、契約論、家族論などが扱われます。
* **公法** では、国家の成立とその正統性、市民の権利と義務、国際法などが扱われます。
カントは、法と国家は、個人の自由を保障し、正義を実現するために必要なものと捉えます。 そして、共和制を理想的な国家形態として提示します。
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影響
『人倫の形而上学・法論』は、その後の法哲学、政治哲学に大きな影響を与えました。 特に、人間の尊厳と権利を重視する思想は、現代の人権思想の基礎の一つとなっています。
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参考文献
* イマヌエル・カント著、宇都宮芳明訳『人倫の形而上学』 光文社古典新訳文庫、2017年
* イマヌエル・カント著、加藤尚武訳『カント全集 8 プロレゴーメナ 法論』 岩波書店、1958年