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カントの人倫の形而上学・法論の対称性

## カントの人倫の形而上学・法論の対称性

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義務の体系における対称性

カントの道徳哲学、特に『人倫の形而上学・法論』においては、義務の体系に顕著な対称性が見て取れます。これは、行為の道徳的評価を、行為の様態と、行為の目的または結果のどちらに重点を置くかによって、二つの基本的な義務、すなわち自分自身に対する義務と他者に対する義務に分類することで明らかになります。

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自分自身に対する義務と他者に対する義務

自分自身に対する義務は、自身の自然素質の完成を目指すべきだという完全義務と、自身の生命を維持すべきだという不完全義務に分けられます。同様に、他者に対する義務も、他者の自由を尊重すべきだという完全義務と、他者の幸福を促進すべきだという不完全義務に分けられます。

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完全義務と不完全義務の対称性

完全義務と不完全義務の区別は、それぞれの義務の性質の違いを反映しています。完全義務は、特定の行為を禁じるものであり、常に守られるべきものです。一方、不完全義務は、特定の目的に向かって努力することを要求するものであり、状況に応じてその達成度合いが異なります。

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対称性の限界

ただし、カントの義務論におけるこの対称性は、完全なものではありません。例えば、自分自身に対する完全義務と他者に対する完全義務は、その内容において大きく異なります。前者は自殺の禁止として現れるのに対し、後者は他者への強制や欺瞞の禁止として現れます。

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対称性の意義

カントの義務論における対称性は、道徳法則の普遍性と客観性を示す重要な要素です。義務の体系を対称的に構成することで、カントは、道徳法則が特定の人間関係や社会状況に依存するのではなく、理性的な存在者としてのすべての人に等しく適用されることを強調しています。

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