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カントの人倫の形而上学・法論とアートとの関係

## カントの人倫の形而上学・法論とアートとの関係

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美学と道徳の関係

カントは『人倫の形而上学』の中で、人間の行為の道徳的評価について論じていますが、この著作の中で芸術について直接的に論じているわけではありません。しかし、カントは他の著作、特に『判断力批判』において美学について深く考察しており、その考察は『人倫の形而上学・法論』における道徳哲学と密接な関係を持つと考えられます。

カントは『判断力批判』において、美的判断は「快」と「不快」を基礎とする主観的な判断である一方、単なる感覚的な快楽の表明ではなく、対象の形式に依存する普遍妥当性を持つと主張します。つまり、美的判断は主観的なものでありながらも、客観的な根拠を持つという点で、道徳法則と共通点を持っていると言えます。

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芸術の自律性

カントは芸術を「天才の働き」と捉え、その自律性を重視しました。カントにとって、芸術作品は道徳や政治、宗教といった外部の目的から自由であるべきであり、それ自体が目的となるべきです。

『人倫の形而上学・法論』においてカントは、道徳法則は人間の理性によって自律的に立法されると主張します。この道徳的行為における自律性の概念は、芸術の自律性の概念と深く関連しています。

ただし、芸術の自律性が道徳的に無関係であることを意味するわけではありません。カントは、芸術作品を通して人間の道徳感情が涵養される可能性を認めています。

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美的理念と道徳的理念

カントは『判断力批判』において、「美的理念」という概念を提示します。美的理念とは、感覚的に表象されることのない、しかし想像力を刺激し、美的判断の基準となるような理念です。

美的理念は、道徳的な理念と同様に、人間の行為に影響を与える可能性があります。美しい芸術作品に触れることで、我々は道徳的な感情や理想を高め、より善き行為へと導かれる可能性があります。

しかし、カントは芸術が道徳の教化の手段として利用されることに対して、明確に反対しています。カントにとって、芸術は道徳とは独立した自律的な領域を持つものであり、道徳に従属するべきではありません。

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