Skip to content Skip to footer

カントの「人倫の形而上学・法論」の思想的背景

## カントの「人倫の形而上学・法論」の思想的背景

###

啓蒙主義の影響

カントの思想、特に「人倫の形而上学・法論」は、18世紀ヨーロッパを席巻した啓蒙主義の影響を強く受けています。啓蒙主義は、理性に基づいた人間の自律と自由を重視する思想運動でした。カント自身も、「敢えて知れ」という言葉に象徴されるように、人間が自らの理性を使って思考し、偏見や迷信から脱却することを強く訴えました。

###

自然法思想との関連

「人倫の形而上学・法論」は、理性に基づいて導き出される普遍的な道徳法則を追求する点で、自然法思想の伝統に位置付けられます。自然法思想とは、人間の制定した法(実定法)を超越した、普遍的かつ絶対的な法秩序が自然の中に存在するという考え方です。カントは、この自然法を「道徳法則」として捉え直し、人間の理性によって認識可能なものとしました。

###

ルソーの影響

カントは、ジャン=ジャック・ルソーの思想からも大きな影響を受けています。特に、人間の自由と道徳性の関係についての考察は、ルソーの影響が色濃く現れています。ルソーは、人間は本来自由な存在であるにもかかわらず、社会契約によって自由を制限されていると考えました。そして、真の自由とは、自己の欲望に盲従することではなく、理性に従って自律的に行動することであると主張しました。カントもまた、人間の尊厳と自由を重視し、道徳法則に従うことが真の自由であるという考え方を展開しました。

###

イギリス経験論との対決

カントの倫理学は、当時のイギリス経験論、特にデイヴィッド・ヒュームの道徳哲学に対する批判を背景としています。ヒュームは、道徳判断の根拠は理性ではなく、感情や情念であると主張しました。一方、カントは、道徳法則は普遍的かつ必然的なものであり、感情のように主観的で移ろいやすいものであってはならないと考えました。そして、「人倫の形而上学・法論」において、道徳法則を理性に基づいて基礎づけようと試みました。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5